事業報告

2018 武道フェスティバル石巻

プロジェクト
パワーアップ・ジャパン from Tokyo
イベント名称
2018 武道フェスティバル石巻
開催日
2018年10月6日(土)、7日(日)

平成30年度パワーアップジャパン from Tokyo 被災地復興支援の第3弾として、宮城県石巻市の石巻市総合体育館において、今年で8回目をむかえる「武道フェスティバル石巻」が2日間にわたり開催されました。 1日目の講演会では、玉木正之氏(スポーツ評論家)による「相撲という“日本文化”の歴史」-相撲は、はたしてスポーツか?-と題した特別講演がありました。
2日目は、総勢247名の子供たちを対象に田辺陽子氏(柔道)、松脇伸介氏(剣道)、野口真史氏(空手道)を講師に迎え、クリニックおよび文化プログラムが開催されました。各講師からはこれまでの経験に基づいた細やかな指導がありました。最初は笑顔を見せていた参加者が講師の熱心な指導に応えようと、目の色を変えて真剣な表情で練習に取り組んでいました。また7団体の模範演武では、普段あまり触れることのない他の武道を目の当たりにし刺激を受けていました。閉会式では「武道の街・石巻」を感じさせる一礼をもって閉会しました。

○講演会

特別講演では、スポーツ評論家である玉木正之氏の「相撲という“日本文化”の歴史」~相撲は、はたしてスポーツか?~というテーマで開催されました。「相撲はスポーツか?」、「e-sportsはスポーツか?」「文化とスポーツは何が違うのか」等様々な視点からの講演がなされました。また、相撲の歴史や変容についての説明の中で様々な局面において、神事、格闘技、興行という3本柱のバランスが保たれ、今日まで相撲という日本文化は維持されてきたということを強調していました。様々な日本文化があるなかで、そのうちの一つである相撲の在り方について当時の映像を交えて説明がなされ、講演会は幕を閉じました。

○柔道

今回で3回目の参加となった講師の田辺氏は、対象が小学校低学年から中学生までと幅の広い年齢であるため、どの年代にも必要な基本的な技術指導を心がけていました。準備体操を済ませた後、体力強化を意識した基本運動としてアニマルウォークを取り入れた指導があり、参加者たちは楽しそうな表情を見せつつも真剣に取り組んでいました。続いて、寝技の基本運動であるエビ・逆エビ・腹臥前進のポイントを丁寧に説明し指導に当たっていました。立技では、大内刈を段階的に指導した後、連絡技を行いました。終盤には、「立技乱取」を行い、参加者たちは今回のクリニックを通して学んだ技を繰り返し実践形式で試していました。最後に田辺氏から「バランス良く鍛える」ことの重要性についてのお話があり、参加者たちは充実した表情で練習を終えました。

○剣道

剣道のクリニックには、94名が参加しました。講師の松脇氏から自己紹介があり、クリニックを通して声を出すこと、行動を早くすることなどが伝えられました。指導は剣道の基本である素振りから始まり、手首の使い方や竹刀の握りなどの技術的指導が行われました。その後、四人一組での切り返しが行われ、相手を追う動作や足のさばき方、打突の角度など細やかな説明がありました。終盤には有段者とのかかり稽古が行われ、格上の相手に向かっていく姿勢とともに今回のクリニックで学んだ技術を再確認しました。最後に講師の松脇氏から「剣道を通して一人の人間として成長していってほしい」とメッセージが伝えられ、クリニックを終えました。

○空手道

空手道は2020年のオリンピック競技となります。技術やルールがかなり流動的に変わってきているので、選手も指導者も変化が求められています。以上を踏まえて野口氏は、空手の動き方が固執してしまわないよう、スピードとパワーの出し方や感じ方について練習メニューを考案しました。クリニックを通して突きの練習を重点的に行い、技ごとに実演を交えながら丁寧なポイントの説明がなされていました。野口氏から説明がなされる度に、参加者たちからの「押忍!」という威勢の良い掛け声が響き渡り、「武道の街・石巻」を体現するクリニックとなりました。

【文化ブースの様子】


アスリートコメント

田辺陽子(柔道)

Q本日の感想を教えてください
A2年前の前回に指導した時よりも、体力的・技術的に向上している様子を見ることができました。武道フェスティバルでは、様々な武道が競技間を超えて交流が図れる点で非常に興味深かったです。お互いが良い意味で刺激し合っていると思いました。例えば、競技人口が少なくなっている競技にとっては他の競技を参考にできる点があるのではないかというふうに感じました。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A子供たちの成長していく過程において体を動かす楽しみを伝えていき、スポーツが持つ力を伝えたいです。また、そこで生まれたエネルギーが次の夢に繋がるような活動を続けていきたいと思っています。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
A震災から月日も経って、いろんな人からの大きな支えとかがあってここまで前に進んでこられたと思います。参加した子どもたちにもこうした思いを次世代に伝えていってもらいたいです。私も皆さんにお会いする機会をこれからも増やしていき、応援していきたいですね。

松脇伸介(剣道)

Q本日の感想を教えてください
Aみんな一生懸命やってくれたので嬉しかったです。みんなの将来が楽しみです。実際に現地の話を聞くまでは分からないことが沢山ありました。私も阪神・淡路大震災を経験した人間として、兵庫県もたくさんの方に助けていただきましたので、私も剣道を通じてはもちろんですが多方面から協力していきたいと思っています。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A兵庫県出身の者として東日本大震災の被災者の方々のことは他人事ではないように感じています。 震災で受けた心の傷は忘れることができないものではあるけど、剣道をやってみること、のめり込むこと、楽しむことで少しでも楽しく過ごせるきっかけになればと思います。また私が教えることで石巻、東北の地から剣道の有力選手が出てきてくれたらこれほど嬉しいことはないですね。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
Aまずはすべてのことに感謝を忘れないことが大切です。普通の日常を過ごすことができるのは誰のおかげなのか、誰が支えてくれているのか、忘れずにいてほしいです。また「礼に始まり礼に終わる」の言葉があるように日頃から礼節を重んじる、そんな心を持った人になってほしいと思っています。全国の剣道仲間が皆さんのことを応援しています。剣道と同様、勇気を出して前に前に一歩ずつ進んで欲しいと思います。

野口真史(空手道)

Q本日の感想を教えてください
A参加者の年齢やレベルにばらつきがあるので、時間配分やレベル分けをして、満遍なく一人一人に課題点をもっと教えてあげられたら良かったです。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A私自身、被災地の石巻出身なので地元のイベントには積極的に参加していき、空手界を盛り上げていきたいというふうに考えています。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
A空手道は自分の為にスタートして誰かの為にゴールするもの。それが空手の道であり、人の道だと考えています。 空手道で得た経験を、空手道を通して地元石巻の為に微力ながらも応援させて下さい。

参加者コメント

中学2年 女子 柔道参加
県外の選手たちと試合や練習ができて勉強になりました。普段やれないことができたのでレベルアップできたかなと思います。今日学んだことを生かして全国大会に出場できるように頑張ります。

中学1年 男子 柔道参加
できるだけ強くなりたいからこのイベントに参加しました。いつもの練習とは違っていろんな人たちと戦えて勉強になりました。今後は、県大会で良い成績を残して東北大会のような大きな大会に出場したいです。

小学1年 女子 柔道参加
たくさんの人と練習できて楽しかった。先生とか大きなお兄ちゃんお姉ちゃん達は強くてすごいなと思った。これからも練習頑張ります。

中学1年 女子 剣道参加
いろんな先生と稽古をして注意されたことを直して試合に向けて頑張っていきたい。今回教えてもらったことはすぐに稽古に取り入れることのできるものばかりだった。普段から礼儀正しくあいさつなどしていきたいと思います。

中学1年 男子 剣道参加
東京からわざわざ来ていただいたことに感謝したい。先生から言われたことは直して今後に活かしていきたい。今までもあいさつなどはしていたけれど、これからは今まで以上に意識したいと思います。

中学2年 男子 剣道参加
稽古をつけてもらって自分の足りないところに気づけた。他の学校の人たちとも稽古ができて勉強になった。先生の「声を出そう」という言葉から元気に声を出して稽古に臨むように意識した。声を出すことや丁寧に素振りを行うことなど切り返しの時の手首の使い方を教えてもらえたので学校でも気を付けて練習したいと思います。

中学3年 男子 空手道参加
野口先生の教え方がわかりやすかったです。クリニックに参加してみて自分の足腰の弱さに気づけたのでこれから鍛えていきたいです。普段、他の武道を見る機会があまりないので勉強になりました。今日教えてもらったことを生かして今後活躍したいと思います。

小学6年 女子 空手道参加
苦手な中段も細かく教えてもらって今後の練習で活かしていきたいと思いました。重心移動で突きを前に押していく突き方をはじめて教えてもらえたのでこれから意識して練習していきたい。

小学5年 女子 空手道参加
わかりやすい稽古だったので道場でも思い出しながらやってみたい。重心移動もわかりやすく教えてもらったのですぐに活かせそうです。