事業報告

2017武道フェスティバル石巻

プロジェクト
パワーアップ・ジャパン from Tokyo
イベント名称
2017武道フェスティバル石巻
開催日
2017年9月30日(土)、10月1日(日)

平成29年度パワーアップジャパン from Tokyo被災地復興支援の第4弾として、宮城県石巻市の石巻市総合体育館において、今年で7回目をむかえる「武道フェスティバル石巻」が2日間にわたり開催されました。
1日目は、現地関係者を対象として、玉木正之氏(スポーツ評論家)の「2020東京オリンピック・パラリンピックに向けての現状~日本武道館の歴史~」と題した特別講演がありました。
2日目は、総勢252名の子供たちを対象に溝口紀子氏(柔道)、大石香菜氏(剣道)、篠原浩人氏(空手道)を講師に迎え、クリニックおよび文化プログラムが開催されました。各講師からは、これまでの豊富な経験に基づいた細やかな指導があり、最初は笑顔を見せていた参加者が講師の熱心な指導に応えようと、目の色を変えて真剣に取り組む姿が見受けられました。クリニックをはじめフェスティバル全体を通じて、武道の基本である「礼」を重んじる気持ちを大切にすることが伝えられ、「武道の街・石巻」を体現する盛大なイベントとして幕を閉じました。

○講演会

特別講演では、スポーツ評論家である玉木正之氏の「2020東京オリンピック・パラリンピックに向けての現状~日本武道館の歴史~」というテーマで開催されました。石巻市の体育協会をはじめ武道の各競技団体関係者が総勢88名集まりました。講演では、東京オリンピック・パラリンピックの現状や課題に始まり、武道館の歴史や「武術」から「武道」への変容について嘉納治五郎と柔道を例に説明がありました。また、スポーツと武道の違いについて、学校教育における武道の必修化など、様々な視座から「武道」についての話がありました。最後に「武道の街・石巻」から古き良き日本の文化を発信してほしいとの願いが伝えられ終了しました。

○柔道

柔道のクリニックは、135名の参加者を対象に実施されました。柔道の基本である呼吸法について、溝口氏から、「試合の際に、心を落ち着かせるために必要になる」という指導があり、参加者たちは真剣に実践していました。次に、周囲をよく見る力を養うことを目的として、紐やボールを使った練習が行われました。自分の紐を取られないように注意する意識や、ボール・人の動きをよく考えて行動する意識が、参加者に徐々に浸透していきました。また、ボールを蹴るという行為がかけ技の練習にもなることが溝口氏から説明されました。その後、受け身や組み手の練習が行われ、溝口氏の実演を交えながらの丁寧な指導では、軸がぶれないよう体幹を鍛えることの大切さが十分に説明されました。最後に、参加者からの質問を受け付け、回答する溝口氏の言葉に参加者は真剣に傾聴していました。

○剣道

剣道のクリニックは、28名が参加しました。講師の大石氏より自己紹介があった後、面打ちの練習からスタートしました。二人一組をつくり、一方が面打ちと小手面打ちを、もう一方はそれに対して切り返しを、それぞれ交互に行いました。次に、一方がかかり手(打つ側)、もう一方が元立ち(受ける側)を交互に行うかかり稽古が行われました。かかり手は、相手を追う動作、間合いの詰め方、足さばき、自分のペースを掴むこと、打ち込み後の切り抜けなどを留意するよう説明がありました。元立ちは、ただ打たれるだけではなく、足さばき、間合いの意識など試合をイメージして取り組むことの大切さがアドバイスされました。クリニック全体を通して、集合を早くすること、声を出すことが何度も指導されたことで、開始時ほとんど聞こえなかった「宜しくお願いします」の声が、終了時の元気な「ありがとうございました!」として結果に表れていました。

○空手道

空手道のクリニックには、小学生を中心とした22名が参加しました。まず、床に伏せた状態から合図で反応良く起き上がり、ダッシュをするウォーミングアップを行いました。次に、二人一組をつくり、一人は前後左右にステップを踏み、もう一人がその動きに応じてついていく練習が行われました。講師の篠原氏から、間合いを離しすぎないようにすること、前後左右にすばやく動く瞬発力が大事であるとアドバイスがありました。続いて、一人が投げた手袋を、もう一人が反射的にキャッチする練習も行われましたが、必ず逆手を使うという制限がついてから、手ばかりに気を取られる参加者が散見されたため、足もステップを踏み続けて準備するよう指導がありました。徐々に、型や組手の練習へと移行していく中で、基本姿勢の一つである四股立ちについて、腰をしっかりと落として重心を低く保つことが重要と指導がありました。最後には、チーム対抗戦が行われて、白熱した戦いが繰り広げられました。

【文化ブースの様子】


アスリートコメント

溝口紀子(柔道)

Q本日の感想を教えてください
A被災地支援の一環として4年前から石巻市に来ているが、以前は子供たちが全然寄ってこなかったのに、今では子供たちから寄ってくるようになった。また、表情も明るくなり、子供たちも積極的に行動するようになった姿から、心もだいぶ変わってきたように感じる。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A復興には大きく、「人・モノ・金」の支援が必要になると思うが、私たちはその中で、人の部分で触れ合ったり、夢を見てもらうという支援ができればと思っている。また、それが現地の人たちがより元気になるきっかけになると思い、支援し続けている。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
A「石巻からメダリストを」というテーマを元に開催しているので、被災者の中からメダリストが出てくれれば、それが本当の意味での復興になると思う。私たちは種をまいて、それを育てていく過程を見届けていくのが楽しくて、このような活動を続けているので、ぜひ諦めないで夢を掴んで欲しい。

大石香菜(剣道)

Q本日の感想を教えてください
Aまず剣道をやっている子供たちが多くて嬉しかったです。また、震災支援としてどう子供たちと話して良いかを考えながらやりました。剣道で刺激を与えられたらいいなと思います。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
Aまず最初に思うことは、本当に現地に行って良いのかということです。実際に来てみて考えたことは、やっぱり来てみないと何も始まらないということです。人の力で明るくしていくこと、人をどんどん呼び込むことが大切だと思います。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
A今日参加してみて、東北の子供たちはおとなしいと感じました。関西の子供なんかは、自分が自分がと出てきますが、引っ込み思案というか、もう少し前に出てきてもいいと思います。やっぱり自分を出していくことは大事なことです。子供たちと一緒に被災地を盛り上げていけたらいいなと思います。

篠原浩人(空手道)

Q本日の感想を教えてください
A今回は2年連続で参加となりました。参加した子供たちの数はそれほど多いわけではありませんでしたが、純粋に空手を楽しんでいる姿が非常に印象的でした。今回も関わることができて良かったと思います。また、最初の書道の模範演武が、イメージとは凄い違っていて、武道といっても文化的な武道で、新しいものを見ることができました。新鮮な気持ちも感じることができました。
Q今後の被災地に対する活動のお考えをお聞かせください
A第三者が判定するので、自分の中で一つで止めるのではなくて、その後でも繋げられるように練習させてもらいました。今回、昨年に続き二回目招いていただいたんですが、僕自身できることは、空手を被災者の子供たちに教える、それで空手を好きになってもらって、自分自身がオリンピックを目指しているので、子供たちに夢を与えたいなと思っています。
Q参加者の皆さんならびに被災地の方々へのメッセージをお願いします
A僕自身が、遅咲きというか、小学校のときの全国大会とか中学校のときの全国中学校大会とかっていうのも出てなくて、その中で空手で活躍したい、強くなりたいという気持ちがあったからこそ、今の自分があると思うので、今は負けて辛いとか、辞めたいっていう気持ちもあると思うんですけど、そこで逃げ出さないで、空手というものを続けてほしいなと思います。

参加者コメント

中学2年 男子 柔道参加
今日教えてもらった試合で緊張した時に使える呼吸法を、これから試合で実践したい。

中学2年 女子 柔道参加
大外刈りをするときに、軸がぶれない方法が勉強になった。頭がぶれていたのですが、軸を作ったらぶれなくなった。大外刈りをする時に、いつも軸がぶれていたけどこれからは、軸を作って練習していきたいと思った。

小学6年 男子 剣道参加
今までこういう機会はなかったので、こういう機会があってとても良かったです。今日は小さく面の時に竹刀が自分の方に返ってくるようにしないことを習って、意識してやりましたが、できたのでこれからも続けていきたいと思いました。

小学6年 男子 剣道参加
先生と稽古ができたので良かったです。今日先生に体当たりをもっと強くしたほうがいいと言われたので、これからはそこに気を付けて練習をしたいと思います。

小学6年 女子 剣道参加
普段できない先生と稽古が出来たので楽しかったです。今日剣道の稽古もしたけれど最初に挨拶の仕方なども練習したので生活面でも使えると思いました。

小学6年 女子 剣道参加
普段出来ない先生と稽古をして、礼儀の仕方など、剣道の色々なことを学んだので、これから使えるようにしたいです。

小学2年 男子 空手道参加
足を動かす動きづくりが疲れた。大変だった。組手の中段、みぞおちにつくときに逆手ができた。

小学6年 男子 空手道参加
しこ立ちと中段がきつかった。ふとももが痛くなったけど、もう少し低くした方がいいとアドバイスをもらった。負けたけど、次は勝てるようにしたい。

小学5年 女子 空手道参加
しこ立ちと逆づきで足が痛くなった。組手では勝てて嬉しい。目標は東北大会に出て世界大会に行きたい。これからも大会で勝ちたい。